第28回 関東・甲信越ブロック大会が横浜で開かる(2018年10月6日~7日)

全国重症心身障害児(者)を守る会関東・甲信越ブロックの第28回大会が、10月6日(土)から7日(日)、2日間に渡り開催されました。会場となった横浜の神奈川県民ホールでは、神奈川県から提供された「ともに生きる」のロゴが入った青いTシャツを着たスタッフやボランティアが、朝から会場案内や受付に立ちました。


「ともに生きる」Tシャツを着たスタッフが忙しく

昼の12時、受付開始と同時に、遠くは新潟や長野から、1都9県の参加者が続々とお見えになり、午後1時の式典開始にはホールが満席となりました。今回の大会参加者は、ご来賓の方も含め470名、ボランティアやお手伝いの方も含めると500名近い方が参加する盛会でした。

6日午後1時に伊藤光子神奈川県支部長の開会の辞で始まった式典は、岩城節子ブロック長の主催者挨拶のあと、黒岩祐治神奈川県知事のご来賓ご挨拶をいただきました。


岩城ブロック長挨拶と登壇ご来賓の皆様

黒岩知事は、津久井やまゆり園の不幸な事件の後、県として「ともに生きる社会かながわ憲章」を制定、すべての人のいのちを大切にする運動を知事ご自身が先頭に立って展開していることを力強く話されました。


黒岩祐治神奈川県知事ご挨拶

引き続き、荒木田百合横浜副市長のご挨拶、江川文誠神奈川県重症児者協議会(重心協)会長のご挨拶と続きましたが、いずれも通り一遍のご挨拶ではなく、重い障害児者を思う気持ちにあふれたお話を伺いました。特に江川会長が、津久井やまゆり園の事件を受けて出された重心協の声明文を読まれた時には、会場全体がその一語一語に感銘を受け聞き入りました。


荒木田百合横浜市副市長ご挨拶


江川文誠県重症心身障害児者協議会会長ご挨拶

当日ご列席いただいたご来賓は、ご挨拶やご講演をいただいた方以外に、桐谷次郎神奈川県教育委員会教育長、金子直勝神奈川県社会福祉協議会副会長、村岡福蔵横浜市社会福祉協議会障害者支援センター事務室長、橋詰寿律国立病院機構神奈川病院院長、北村耕一神奈川県特別支援学校校長会会長、上田美明神奈川県肢体不自由教育校PTA連合会会長、内田照雄神奈川県心身障害児者父母の会連盟代表幹事、井合瑞江神奈川県立こども医療センター施設長、高橋協小さき花の園園長、細田のぞみ相模原療育園施設長、生方克之七沢療育園副園長、保坂和子ワゲン療育病院長竹施設長、根津敦夫横浜医療福祉センター港南センター長、飯野順子秋津療育園理事長、斎藤千尋国立病院機構甲府病院院長代理、成田裕子NPOフュージョンコムかながわ・県肢体不自由児協会理事長の方々がいらっしゃいます。
お忙しい中をご来臨いただきましたことにお礼を申し上げますとともに、式典では、時間の関係とは言え、お名前を紹介するだけの失礼がありましたことお詫びいたします。

午後1時30分に式典を終えた後引き続き、基調講演がありました。
「ヒサ坊からのメッセージ」~生きるとは、幸せとは~と題して、みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家施設長福田雅文先生のご講演です。
北浦雅子会長のご子息故北浦尚さんが、守る会誕生の引き金を引いたこと、そして24歳で施設入所され、48歳から絵を描き始めた尚さんの生き方が私たちに教えることを分かりやすくお話され、重い障害を持っていてもその人らしく生きていくことができる事、それを周囲も社会も大切さに守っていかなければいけないと改めて考えさせられました。


基調講演 「ヒサ坊からのメッセージ」福田雅文先生

休憩を挟んで午後3時15分から、2つの会場に分かれて分科会がありました。
第1分科会(国立施設部会)(重症児施設部会)
「生活施設における『人生支援』の一部としての日中活動について」
司会進行補助者  松橋清、中村農夫一両支部長
コーディネーター 神奈川県重症心身障害児者協議会会長 江川文誠氏
パネラー   横浜医療福祉センター港南 生活支援部長 生田目昭彦氏
ワゲン療育病院長竹 生活支援員   秋元友紀氏
国立病院機構全国児童指導員協議会副会長 山田宗伸氏


1分科会 生活施設における「人生支援」の一部としての日中活動について

先ず、江川コーディネーターから、「療育」という言葉から「RYOUIKU」という新しい概念へ取り組んでいく必要性が話され、その実践例として秋元氏の「有名人へファンレターを出す」という楽しさあふれる活動報告、生田目氏から「ユニット方式という新しい施設設計の施設で、利用者が生活を楽しめるよういかに工夫していくか」の報告、山田氏から「支援者側の陥りがちな思い込み例を引き合いに出しながら、意思決定支援の考え方について」お話がありました。
最後にコーディネーターが総括した中で、次郎君のお母さんが言った言葉として紹介された「楽しかったのよね、結構。大変さも含めて」の一言が、とても印象に残りました。
人生を一緒に楽しめる「RYOUIKU」ができたら、と強く思いました。

第2分科会(在宅部会)(母親部会)
「在宅医療が必要な人の生活実践と支援」
司会進行補助者  安部井聖子、田中鈴子両支部長
コーディネーター 帝京科学大学医療福祉学科准教授    加藤洋子氏
パネラー     北綱島特別支援学校保護者会前会長   加藤千春氏
呼吸器ケアが必要な子どものママ調査代表   大泉えり氏
前北綱島特別支援学校校長       村上英一氏
NPO法人あいけあ 理事長                岡安 玲氏
NPO法人歩む会  理事長                北村叔子氏


第2分科会 在宅医療が必要な人の生活実践と支援

先ず、加藤コーディネーターから、在宅の重症心身障害児者への支援が届かない厳しい現実が、神奈川守る会の調査と、加藤先生が行った分析、さらにフォローのための聞き取り調査から浮き彫りなったことが問題提起として出され、それを受けて各パネラーからこれまでの先駆的ともいえる在宅医療に係る事例の実践報告がありました。
加藤千春氏は「多くの支援者のご協力のもと 、4歳まで生きられるかどうかと聞かされていた息子さんと一緒に、独自の在宅での救命 医療を築いてきて、15歳の現在、週2、3日は登校できるようになり、今では私の所へ生まれてきてありがとうと思えるようになった」とお話になり、大泉えり氏は「介護当事者自らが、訪問とア ンケートの2段階調査を行ったことにより、 それまで情報共有がなされていなかった、人工呼吸器を使う超重症児の在宅での入浴習慣 について、その多様性、困難さ等をより具体的に明らかにできた」と報告され、村上英一氏は、「校長をしていた特別支援学校は、横浜市内で最も医療ケア児の比率が高い学校で、通学の確立が重要課題の一つであって、その解決には看護師の存在が大きく関わっていて、必要なこととして、配置の拡充と、訪問看護師の支援範囲の拡大があること 、およびその他の課題」を訴えられ、岡安玲氏は、「医療ケアが必要な障害の重い子どもたちの高等部卒業後の進路先がないことを危惧した親の声をきっかけに活動を始め 、本年4月に、生活介護と放課後デイサービスの多機能事業所を開設されたこと、さらに 訪問学級であった子どもの卒業後の“生涯教育”を出前する活動も試行している」と熱く語られ、北村叔子氏は、「看護師で障害者の母親という立場で、制度がまだ無かった15年前に、 横浜市のモデル事業として、呼吸器ケアが必要な人を含めた医療依存度の高い人が暮らす グループホームを立ち上げたこと、そして覚悟、関係性、専門性、連携、評価をキーワー ドとして、今に至るまでに考えて来られたこと」をお話しされました。
最後に、加藤コーディネーターにより、保護 者の方には、それぞれのお子さんが将来どんな人生を送って欲しいか、ということを描いていただきたい、そうしますと、ライフステージ毎に沢山のことが思い浮かび、心配することも沢山出てくると思いますが、それを一 人で悩まないで、皆で一緒の方向を向いて解 決していきましょうと、第2分科会は締め括られました。参加者は120名でした。
事務局よりお詫び:配布資料の文字が細かく、また中には判読不能なものも多く含まれていました。内容をすべて盛り込もうとしたこと、スライド画面をそのままプリントアウトしたことが原因で、申し訳ありませんでした。

午後6時から場所を替えて、横浜中華街に位置するローズホテル2階 重慶飯店で懇親会がありました。ジャズバンド「藤田勝美とLeap Out」が歓迎の曲を流す中、278名の懇親会参加者が着席、楽しい交流の夕べが始まりました。


ジャズバンドが横浜の夜を演出


伊藤光子支部長の歓迎


雨宮孝久副会長挨拶


福田雅文先生による乾杯の音頭


ジャズシンガー井出理夏さん


中華のフルコース10品を堪能


司会者も会を盛り上げて


細田のぞみ相模原療育園施設長のお話


参加者がテーブルを回って交流


家族会と施設幹部の交流も(七沢療育園)


江川先生とソレイユ川崎の面々

大会2日目

県民ホールの開場が午前9時、会場への入場はホール側の準備のため午前9時10分からということで、参加者の方には若干あわただしい朝となりました。
2日目の冒頭、昨日もプライベートで参加してくださった首藤健治神奈川県副知事が登壇され、プログラムにはなかった飛び入りという形で、ご挨拶をいただきました。


首藤健治神奈川県副知事のご挨拶

ゼロサム社会とは違う福祉の基本的な姿勢が大切であることを強調されたお話は、副知事の障害者福祉に抱く熱い思いとともに、参加者に感動と勇気を与えてくださいました。

次に、昨日の分科会について、第一分科会は松橋清長野県支部長が、第二分科会は田中鈴子千葉県支部長がそれぞれ報告されました。


第一分科会報告を行う松橋清支部長


第二分科会報告を行う田中鈴子支部長

午前10時から50分にわたって行われた、(社福)全国重症心身障害児(者)を守る会 宇佐美岩夫常務理事の「中央情勢報告」は、これまでも私たちの活動に大きな刺激を与えてくださいましたが、今年はさらに広がりと示唆に富んだ内容として伺いました。
特に、配布資料には敢えて書かなかったと断った上での、宇佐美常務ご自身のお考えも交えたお話は、大会に参加して初めてお聞きできたことだけに大変参考になりました。
例えば、障害者福祉に振りむける予算原資が限られてくる中で、これからは介護保険と同じような共同負担の発想と仕組みがあってもよいかもしれないというご指摘は、これまで考えもしなかったことだけに、刺激的でした。


中央情勢報告を行う宇佐美岩夫常務理事

午前10時50分から11時10分までは「親の会報告」です。
水津正紀全国重症心身障害児(者)を守る会副会長がお話してくださいました。
会員の高齢化に伴い、会員数の減少が憂慮されるが、ここで会員増勢の3か年計画のもと大いに活性化を図っていこうとの呼びかけは、日ごろ足元の家族会の減少に悩んでいる現場のリーダーの方々に共感を持って受け入れられました。


親の会報告を行う水津正紀副会長

休憩を挟んで午前11時20分からの最後のセッションは、特別講演「ともに生きる社会をめざして」~津久井やまゆり園の再生とともに生きる社会かながわ憲章~でした。
講演者は、神奈川県福祉子どもみらい局共生社会推進担当部長 柏﨑克夫氏です。
今大会のテーマを「重症心身障害児者とともに生きる社会を目指して」としたのは、まさに私たちが乗り越えていかなければいけない眼前の課題が、津久井やまゆり園の再生と、それを梃子にしての「重症心身障害児者が普通に生きることのできる社会の実現」だからです。スタッフのTシャツに、資料を入れる袋に、障害を持つ書道家金澤翔子氏が書いた「ともに生きる」のロゴをあしらったのも、そこに焦点を当てた議論を深めたいと考えたからです。


柏﨑克夫神奈川県共生社会推進担当部長の講演

柏﨑部長のお話は、わずか30分という短い時間でしたが、私たちの想像を超える努力を県がしてくれていることがよくわかりました。
特に、やまゆり園の入所者の意思尊重のプロセスは、世界のどこもがやってこなかった本格的、徹底的な取り組みであると深い感銘を受けました。
この取り組みが成果を上げ、神奈川県にとどまらず、日本国中に、さらには世界の未来に向かって広がることを願ってやみません。

最後は恒例の、次回開催県挨拶として、倉持寿栃木県支部長が「2019年9月28日(土)~29日(日)第29回関東・甲信越ブロック大会を宇都宮で開催します。皆さんそろってご参加ください」と呼びかけ、会場の栃木県支部会員も立ち上がって唱和し、会場から暖かい拍手を受けました。


次回開催県 倉持寿栃木県支部長の呼びかけ

そして、長くて短かった2日間の大会は、伊藤光子神奈川県支部長の御礼の言葉をもって12時丁度に散会となりました。

 

補足
1.会場では、休憩時間に神奈川在住の重症心身障害児者の方々のスナップ写真がステージに音楽と一緒に流され、守る会の大会の雰囲気を高めました。これは神奈川支部アドバイザー渡部和哉氏の制作によるもので、渡部氏と写真を提供していただいた方にお礼申し上げます。

 

2.スタッフやボランティアの人が来たTシャツ

神奈川県から75枚の提供がありました。大会を盛り上げるのに一役買いました。県のご厚意にお礼申し上げます。

 

3.資料を入れた不織布バック

書家金澤翔子氏のロゴを神奈川県の許可を得て使用。

 

4.主な配布物(2.の不織布バックに入れ、受付で配布)

 

5.お土産の参考資料として「私の記録」あんしんノートを参加者に配布

 

謝辞: 今回の大会が、盛会となりましたのは、何よりも470名という大勢の参加を得たことによります。
新潟をはじめ遠路ご参加いただいた皆様、ホテル代を払ってまで2日間に渡ってご参加くださった方々、交通の便は悪いがともかく大会をのぞいてみようとお越しくださった皆様に心から感謝申し上げます。
さらに、守る会の会員でないにも拘わらずご参加くださった方が大勢いらっしゃったことは、大会を盛り上げていただいたばかりでなく、違った視点からのご意見で私たちの議論を深めてくださいました。ありがとうございました。
また、大会を通じて私たちを勇気づけてくださったのは、黒岩祐治神奈川県知事をはじめ、ご来賓の皆様のご来臨です。3連休の始めでもあり、特に黒岩知事と、荒木田百合横浜市副市長には、他のご公務から直接駆けつけてくださるという無理をお願いしました。
首藤健治神奈川県副知事には2日に渡ってご参加くださり、飛び入りで暖かい励ましのお言葉をいただきました。
橋詰寿律神奈川病院院長をはじめ、病院や施設のトップの方々が参席くださいましたことも、日ごろから身近でお世話になっているだけに、改めてありがたく感じたことでした。
桐谷次郎神奈川県教育長はじめ、県及び横浜市社会福祉協議会、特別支援学校校長会会長の皆様もお忙しい中を縫ってのご臨席でした。
父母連の内田輝雄代表や、肢体不自由教育校PTA連合会上田美明会長も駆けつけてくださいました。
ご来賓の皆様本当にありがとうございました。
今大会の準備から実行にいたるまで、神奈川県重症心身障害児者協議会(重心協)に助けていただきました。
特に江川文誠会長には、スタートの時点からアドバイスをいただき、最後はご自身がコーディネーターとして第一分科会をリードしてくださいました。ご親切にお礼の申し上げようもありません。
また重心協の幹事の皆様は、当日の場内整理のお手伝いまで快く引き受けてくださいました。私たちは、重心協の皆様に日頃お世話になることはあっても、お返しをすることができません。私たちの感謝の気持ちを受けてくださることを願うばかりです。
ボランティアの皆様にも助けられました。
特に、高畑様とグループの皆様、長田様と五木田様、フュージョンコムの成田理事長と松田様、帝京科学大学の皆様のお力添えが無かったら、今大会の運営は不可能だったことでしょう。本当にありがとうございました。
ご講演、ご出演いただいた方は、本当の意味で今大会の主役を引き受けてくださいました。
遠路駆けつけてくださいました福田雅文先生をはじめ、お一人お一人に、おかげさまで第28回大会は実りのあるものとなりましたと、お手を取ってお礼を申し上げたい気持ちです。
恐らく参加者の方たちも同じ気持ちで、皆様のお話を拝聴したことでしょう。
最後になりましたが、私たち神奈川支部は、主催県という立場で裏方の役割を最大限務めさせていただきました。主催者である関東・甲信越ブロック岩城節子ブロック長のご指導と雨宮孝久大会事務局長の詳細にわたるご助言に感謝申し上げます。
当日もお手伝いいただいた東京支部の皆様と、側面からサポートいただいた支部長の皆様にも心から御礼申し上げます。
今大会を通じて、守る会を支えてくれる方がいかに多いか、また力になってくださるかを、身に染みて感じました。
神奈川支部としてさらに結束を高め、皆様のご期待に応える努力を続けてまいりますので、今後ともよろしくご指導とお力添えの程お願い申し上げます。

平成30年10月
全国重症心身障害児(者)を守る会 神奈川県支部長 伊藤光子

追記:
1. 大会開催について行政、団体からご後援いただきました。
神奈川県、神奈川県教育委員会、横浜市、
神奈川県社会福祉協議会、横浜市社会福祉協議会
2. 神奈川県重症心身障害児者協議会のご協力をいただきました。
3.今大会開催にあたり助成金、ご寄付を賜りました。
神奈川県社会福祉協議会
神奈川新聞厚生文化事業団
日揮社会福祉財団
加藤洋子様、向井眞一様、保坂和子様、小林静子様、平岡法子様

帝京科学大学医療福祉学科准教授加藤洋子様から、勇美記念財団賞の賞金全額をご寄付いただきました。

上記の方々、組織、団体のご支援は、大会開催の原動力になり、私たちが前に進む力を与えてくださいました。
ここに深甚なる感謝の意を表します。ありがとうございました。